食べることは暮らすこと。食ぐらし

食べることは暮らすこと。食ぐらし

vol.13

世界中がシェフのお客さま 後編

カウンターに立つてんぷら職人

カウンターに立つてんぷら職人もう一人のシェフは、「てんぷら近藤」の近藤文夫さん。近藤さんはシェフというより、職人という名称の方がぴったりくる方です。てんぷら近藤もアルケッチャーノ同様に、予約が取れない店。そして、日本中、世界中から人を集める店です。

池波正太郎が著書「男の流儀」に「てんぷら屋に行くときは腹をすかして行って、親の敵にでも会ったように揚げるそばからかぶりつくようにして食べていかなきゃ、てんぷら屋のおやじは喜ばないんだよ」と、てんぷらを食べる流儀に関して書いています。池波正太郎がてんぷらと言うと、まさしくてんぷら近藤を指します。池波正太郎は近藤職人が自店を持つ前、山の上ホテルのてんぷら店で雇われていた時代から通っていて、池波家の毎年のおせち料理は近藤職人の池波正太郎への感謝と真心で作られ、自らが池波邸へ大晦日に届けることは有名な話です。

近藤職人は、てんぷらを単に揚げるということだけではなく、揚げた後の余熱を考えて、お客さまにてんぷらをお出しするということから、「てんぷらは現代の蒸し物だ。」という表現を使います。余熱を考えると言うことは、お客さまのもとへてんぷらをお出しする時間、その瞬間にこだわることだと思われます。

それは鮮度へのこだわりにも見られます。揚げる食材は下ごしらえなしで、お客さまからオーダーが入ったときに、お客さまの目の前で下ごしらえを始めていきます。その様は、鮮度にとことんこだわる職人魂の現れと言うしかありません。

鮮度へのこだわりは、素材のこだわりへと通じます。北海道から沖縄まで、季節季節の野菜を自らの目と舌で確かめる姿が度々目撃されています。また、毎朝築地に自ら足を運んで当日の魚を吟味する姿は、築地の当たり前の朝の風景です。

素材にこだわり、鮮度にこだわる。それはカウンターの目の前にいるお客さまのために。まさに職人の姿です。その姿とてんぷらのおいしさを求めて、てんぷら近藤へ訪れる世界中の人とカウンター越しに繋がる様子は、まさに日本の食文化が世界と繋がる光景です。ぜひその光景と近藤職人の技と、これぞてんぷらというてんぷらを食してみてください。様々なことが感じられるはずです。お店は東京・銀座にあります。

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食のぐるり株式会社
代表取締役

高原 純一

企業のマーケティング・コンサルティング、プロジェクト・ディレクションを基盤に講演、執筆業務を営む。
傍ら、消費者と農業・漁業生産者の目線から、食卓と暮らしのしあわせづくりにも取り組んでいる。

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